研究概要 |
石炭の高次構造研究の一つとして石炭の会合状態に及ぼす電子受容体の添加効果について検討し,以下の成果が得られた。 電子受容性の尺度である電子親和力の異なる9種の電子受容体の石炭抽出物の二硫化炭素(CS_2)-N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)混合溶媒への可溶化に及ぼす添加効果を調べ,一・二の例外があるが,電子受容性の強い添加物ほど可溶化を増大させることが分かった。 又,代表的電子受容体であるテトラシアノエチレン(TCNE)を用いた系において,TCNEの添加により可溶になった成分にはTCNEが強く吸着しており,溶媒洗浄によりこの吸着TCNEを取り除くと,CS_2-NMP混合溶媒が不溶になることを明らかにした。 石炭抽出物のNMP,ピリジン溶液の表面張力を測定し,抽出物の中で軽質成分であるアセトン可溶成分では表面張力-溶液濃度とのプロットにおいて急に表面張力が減少しなくなる臨界ミセル濃度が存在することを明らかにした。一方,抽出物中の重質成分であるアセトン不溶ピリジン可溶成分ではそのような不連続点は観測されず,濃度による表面張力減少の傾向も小さかった。 以上の結果から石炭中には電荷移動相互作用,水素結合などの種々の非共有結合による会合体が存在し,これらの一部が電子受容体の添加により解離し,溶媒に可溶となるために抽出率の増加,すなわち,石灰の可溶化が促進されたものと結論した。
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