研究概要 |
平成6年度では主に新規な有機無機ヘキサメタリン酸金属塩の合成を行なった。固体材料への完全なキラル性の導入の前駆体となり得る新規な固体リン酸塩の合成に成功した。また有機不斉分子を固体リン酸塩に構造的に取り込んだ新規な結晶の合成にも成功した。これらはすでに構造解析を終えており、環状ヘキサメタリン酸イオンと触媒活性点となり得る遷移金属イオンが酸素-金属イオン-酸素ーリンの結合を介して、交互に連結した鎖状構造をなし、この鎖が有機イオンによって連結され3次元ネットワークを形成している。さらに、この金属イオンの周りにはアミンが配位しており、金属イオンを中心に見れば有機配位子とポリリン酸イオン配位子からなる金属錯体が形成され、それぞれが結合して鎖を形成したものとなっている。 平成7年度では、キラル活性点に反応分子がアクセスできる程度の空間をもった形での3次元ネットワーク化の方法を検討した。新規化合物として芳香族アミン(アニリン、o-,m-,p-トルイジン、p-アニシジン、p-アミノフェノール)及び、ベンゼン環を含む脂肪族アミン(ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、不斉炭素を有する1-RS-,R-,S-フェニルエチルアミン)で修飾した新規ヘキサメタリン酸塩を合成した。これら化合物の有機物は構造中、有機カチオンとして存在し、2次元的な水素結合ネットワーク層が構築され、結晶は2次元的方向性を示す。また、芳香族アミンで修飾したヘキサメタリン酸塩の金属塩の構造はP_6O_<18>^<6->と八面体配位のCuO_2(H_2O)_4が鎖状に連なった層状構造をなし、その層間距離は修飾有機分子の大きさによって層間距離が決まることを見い出した。この他、軸不斉を持つ1,8-ナフタレンジアミン(C_<10>H_<10>N_2)とP_6O_<18>^<6->環を活性金属(Co,Ni)に配位させた新規な有機無機金属錯体[(C_6H_5NH_3)_2M_2(C_<10>H_<10>N_2)_4P_6O_<18>4H_2O(M=Co,Ni)]を合成した。以上のようにヘキサメタリン酸塩の合成により活性点となりえる金属イオンに直接構造環境を制御する配位子を導入することができ、またキラルな物質を用いることで特異な構造環境が得られることが判明した。
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