研究概要 |
抗ポルフィリンモノクローナル抗体を生産する2種類のハイブリドーマ細胞(13-1,03-1)を常法により取得し、両抗体のFab領域について、ポルフィリンと結合状態でペルオキシダーゼ活性を測定した結果、03-1抗体の場合にのみ若干の活性が認められた。さらに、ハイブリドーマ細胞由来のmRNAを元に、両抗体のFab領域をコードするcDNAを、大腸菌を宿主としてクローニングし、塩基配列の決定を行った。それぞれの抗体由来のL鎖、H鎖を大腸菌内で大量発現させる系を構築し、精製した。03-1抗体,13-1抗体ともL鎖単独でも抗原結合能があるという珍しい事実が明らかにされ、ポルフィリン鉄錯体結合状態におけるペルオキシダーゼ活性を調べたところ、13-1L鎖の場合、ピロガロールを基質として高い活性が認められた(Km(H202)=4.0mM,Km(pyro)=2.3mM,kcat=667min^<-1>)。そこで、この13-1L鎖(220アミノ酸残基)とポルフィリン鉄錯体の複合体を、新規抗体酵素、L-zymeと命名した。興味深いことに、L-zymeの反応至適温度は、90℃であった。また、L-zymeの立体構造を予測した結果、天然のペルオキシダーゼにおいて良く保存されている遠位、地位のヒスチジンに相当する残基が超可変部領域に存在すると考えられ、L-zymeは、天然のペルオキシダーゼと類似の触媒機構を有していることが示唆された。さらに、遠位、近位のヒスチジン残基を他のアミノ酸残基に置換する事により、活性を消失させることができ、この反応メカニズムを証明できた。
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