研究概要 |
10-20個の色素分子からなる分子クラスターであるシニアン色素のJ凝集体(JA)は、興味深い線型、非線型光学特性を有している。本研究において、われわれは混合クラスターのモデルという観点から、2種類のシアニン色素を含む分子集合体複合系を取り上げた。新規なLB膜、高分子膜を作成し、分光学的方法によって膜構造、光物性を明らかにすることができた。用いたシアニン色素は次の通りである。5, 6, 5', 6'-dibenzo-1,1'-1diethyl-2,2'-cyanine chloride(dye I), 5, 5'-di-chloro-3, 3'-diethyl-9-phenyl-thiacarbocyanine chloride(dye II), 3, 3'-demethyl-9-phenyl-4, 5, 4', 5'-naphtothiacarbocyanine chloride(dye III), 1, 1'-dietyl-2, 2'-cyanine chloride(dye IV), 1-methyl-1'-octadecyl-2, 2'-cyanine perchlorate(S120), N, N'-dioctadecyl-oxacyanine perchlorate(S9), N, N'-dioctadecyl-thiacyanine perchlorate(S11).色素のうちでJバンドが短波長側にあるもの、長波長側にあるものをそれぞれドナー(D)、アクセプター(A)と呼ぶ。分子集合体複合系は分離型(S)、モザイク型(M)、自己主張型(HP)、アマルガム型(HA)に分類できる。現有の顕微分光装置、蛍光顕微鏡と今回購入したカラーチルドCCDカメラ、カラーモニターを用い吸収・発光スペクトル測定、膜構造の観察を行った。LB膜中で、dye I+dye IIはS型、dye I+S120、S9+S11はM型またはHP型となる。dye II+dye IIIはHA型を形成する。高分子膜中において、dye I+dyeIVはS型となる。S型とM型の分子集合体複合系では、エネルギー移動の結果D凝集体の共鳴蛍光の消光、A凝集体の共鳴蛍光の増感が観察された。2種類のシアニン色素がHA型を形成するための二つの条件:立体的要因、電子的要因をくわしく検討し、電子的要因を表すパラメータΘを提案した。
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