研究概要 |
色素として塩化アルミニウムフタロシアニン(AlPcCl)、フッ化アルミニウムフタロシアニン((AlPcF)_n)を用い、超高真空中で種々の基板(アルカリハライド、シリコン、石英ガラス)上への分子配向挙動を検討した。以下に結果を要約する。 AlPcClはすべての基板上で分子面(分子径約10Å)を並行に向けて分子配向する。ただし配向した際の分子間距離は、基板結晶の格子間距離の影響を受けるため異なっている。すなわちKCl(100)面(K-Cl間距離:3.14Å)およびKBr(100)面(K-Br間距離:3.29Å)では(√<10>×√<10>)R±27°,NaCl(Na-Cl間距離:2.81Å)では(√<13>×√<13>)±11°,となる。これは分子径10ÅのAlPcClは原子間距離約3Åの基板面と格子整合を保ちながら(整数倍)ファンデルワールス力でエピタキシャル成長することを示している。一方(AlPcF)_nはアルカリハライド(100)面上ではAlPcClの場合と同様に分子面を基板に並行に向けて配向し、KCl(100)面(K-Cl間距離:3.14Å)に対しては(√<17>×√<17>)R±0°、となる。しかしH-Si(100),H-Si(111)、SiO_2ガラス上では分子面を基板に垂直に向けて配向する。また基板温度が60℃以下と低い場合はアモルファスとなる。このようAlPcClと(AlPcF)_nは分子径がほぼ同じでqるにもかかわらず基板への分子配向が異なる。これは分子における表面電荷密度の相違が原因している。分子配向によって作製された単結晶の大きさは基板温度に依存する。AlPcClの場合は-120℃:20nm,25℃:100nm,180℃:400nmでありいずれも微結晶粒である。 有機分子と同様にファンデルワールス力で積層するとみられる無機半導体として層状構造半導体を取り上げた。我々は層状構造のGaSをH-Si(100)上に蒸着した時、層状に積層することを確認した。さらに、GaS蒸着膜上に(AlPcF)_nを蒸着した時、(AlPcF)_nが分子面を膜面方向に垂直にして配向することを確認した。これにより有機/無機多重膜の作製が可能となった。 超高真空中で作製したAlPcCl分子配向膜の物性をその場測定によって求めた。
|