研究概要 |
本研究は、アルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオンに対する錯形成能を有し、かつpH刺激に応答する新規環状多座配位子及びその非環状類縁体の分子設計と開発を目的として行い、以下の成果を得た。 1.二つのカルボン酸部位を有する非環状多座配位子を5種類合成し、アルカリ土類金属イオンのpH制御バルク液膜輸送を行ったところ、二つのキナルジン酸部位をトリメチレン鎖で連結した誘導体が高いBa^<2+>選択性を示した。また、そのカチオン選択性はイオノホアが形成する擬環状構造の空孔サイズによく対応しており、電子供与性原子数とともにその適切な配置がイオノホアの分子設計上重要であることを見いだした。 2.リチウムイオンに選択性を示すキナルジン酸型及びニトロフェノール型非環状イオノホアを新たに合成してバルク液膜系と乳化液膜系での輸送を行い、後者で高効率なリチウムイオンの選択的輸送に成功した。 3.C-ピボット三鎖型非環状多座配位子の分子設計において、ピボット位の基本構造がトリメチロールエタン骨格とメチルグリセロール骨格では、後者の方がアルカリ金属イオンに対してはるかに高い錯形成能を示すことを見いだし、基本骨格選択の重要性を明らかにした。 4.[15,17,18]及び[18,18,20]型モノアザクリプタンドの合成にはじめて成功し、アルカリ金属イオンに対する錯形成能を溶媒抽出法と液膜輸送系で評価したところ、高い錯形成能と空孔サイズに応じた選択性を示すことがわかった。クリプタンド類は錯形成能が強すぎるためにイオン輸送担体としては不適とされていたが,pHに応答する窒素原子を一つ導入したところ、高性能キャリヤ-として機能することを見いだした。中でも[18,18,20]型N-ドデシルモノアザクリプタンドは400倍を越える高いK^+/Na^+輸送選択性を示すことを見いだした。
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