研究概要 |
N-ベンジルヒドロキシルアミンとアセトンから得られるニトロンを、ベンゼン-水2相系溶媒中、分子内に2個の親電子中心を有する基質と反応させると、一つの親電子中心を酸素原子が、残りの親電子中心を窒素原子が攻撃して、イソキサゾリジン環が生成することを見いだした。この反応は水酸基とアミノ基を、その求核性をコントロールして順番に導入する新規合成反応として極めて有用である。その適用範囲と限界を検討した。天然のキラルテンプレートである酒石酸やマンニトール、さらには人工のキラルテンプレートから合成した9種類のα,β-不飽和エステルを基質として用いた。(4S,5S)-ビス(t-ブチルジメチルシロキシ)骨格をもつα,β-不飽和エステルの場合には、その鎖状構造の配座が固定されるため、ニトロンのオレフィンへの付加反応において、99%de以上のジアステレオ選択性が見られた。一方、ニトロンによる選択性は60-88%deであった。そこで、ニトロンの側の選択性の向上のため、同様の(4S,5S)-ビス(t-ブチルジメチルシロキシ)骨格を有するニトロンを合成し、反応を行った。その結果、ほぼ完全なジアステレオ選択性が得られることを見いだした。
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