研究概要 |
乳化型液膜による物質輸送は分離速度が速いため工業化が有望視されている。多鎖型の機能性界面活性剤は,機械的強度の強い乳化液膜(W/O/W型の乳化液)を形成し,輸送のキャリアーとしても機能することが期待された。そこで,レゾルシン系カリックス[4]アレン,コンプレキサン類,大環状ポリミンに,3〜4本のアルキル鎖を導入した環状多鎖型の機能性界面活性剤を合成し,Cs^+,Cu^<2+>,あるいはアニオン種の乳化型液膜輸送へ応用した。 環状4本アルキル鎖のレゾルシン系カリックス[4]アレンは,レゾルシノールに長鎖脂肪族のアルデヒトを作用させて合成した。直鎖状および環状多鎖型コンプレキサンは,エチレンジアミン,ジエチレントリアミン,あるいはシクラム(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)に,2-ブロモドデカン酸を反応させ,また環状多鎖型ポリミンは,シクラムにハロゲン化アルカンを作用させて合成した。これら3〜4本鎖の環状多鎖型界面活性剤はトルエンに対して乳化能を示し,安定なW/O/W型の乳化液膜になった。環状4本アルキル鎖のカリックス[4]アレンによりCs^+の輸送を試みたところ,アルキル鎖長C_6では単独・少量でも8〜11分/回の割合でターンオーバーして,外部水相中のCs^+を内部水相へ連続的に輸送することができた。多鎖型コンプレキサンによる輸送でも,2〜3鎖型にすることにより安定なW/O/W乳化液膜が長時間安定に保たれ,Cu^<2+>を7〜12分/回の割合で連続輸送することができた。また,環状多鎖型ポリアミンは,ピクリン酸,Br^-などアニオン種の乳化型液膜輸送剤として機能した。
|