研究概要 |
近年、地球規模の環境問題の中でも地球温暖化への関心度は非常に高まり、その温暖化の主犯として、にわかにエネルギー消費後に大量排出する二酸化炭素がクローズアップされてきた。現在の急務は、二酸化炭素の排出を抑える新エネルギー、代替エネルギーおよび省エネルギー技術の開発・推進を行い、さらに、森林の拡大、陸海圏おける植物の繁殖による二酸化炭素の固定化を進めるとともに種々に方法論を用いて二酸化炭素を低減する研究が焦眉の急となっている。 本申請者は、低原子価の銅(I)を用いた錯体触媒がアリルハライドとの反応で、π-アリル銅ハライド複合体挙動を示すとともに、アリル誘導体変換反応およびそれらの不斉誘導に優れた触媒系であることを初めて見い出し、それらを用いた応用研究について極めて先導的な研究を行ってきた。本研究は、二酸化炭素の有効利用および有機材料資源への応用を目指し、酵素類似機能モデル系を考慮した新規銅(I)錯体触媒を合成し、それを用いて二酸化炭素とアンモニアの反応物である炭酸アンモニウムとアリルハライドとの反応で、医薬、農薬の原材料となりうるカルバミン酸誘導体合成のプロセスを検討し、有機工学化学に新しい先導的分野を開拓しようとしたものである。来年度は以下の結果が得られた。 アリルカルバミン酸誘導体合成開発:3-クロロ-1-プロペン、1-クロロ-2-ブテンおよび3-クロロ-1ブテンからアリルカルバミン酸誘導体への合成法の開発について種々検討を行った。その結果、アルゴン雰囲気下、アスコルビン酸銅(I)錯体を用いてDMSO-H_2O(9・1)混合溶媒中、炭酸アンモニウムとアリルハライド類との反応を行なった結果、比較的穏和な条件で反応は進行し、それぞれ対応するアリルカルバミン酸およびアリルカルバミン酸エステル類が良好な収率で得ることが明らかとなった。 また、反応中間体であるニトリルイミンと臨界状態の二酸化炭素中、溶媒として1,4-ジオキサンを用いる1,3-双極付加反応を行なう事により生理活性物質の原料となりうる1,3,4-オキサゾリン-2-オン類の誘導体が比較的収率良く合成できた。
|