研究概要 |
【1】種々のポリエーテルポーダンド型置換基を有する1,1′-ビナフタレン-2-オール誘導体のδ-,ε-及びζ-ケトエステルを合成し,MgBr_2存在下、i-Bu_2A1H及びグリニャ-ル試薬を反応させた。その結果、ζ-ケトエステルの1,10-不斉誘起反応は10%d.e.以下の選択性であったものの、δ-及びε-ケトエステルの1,8-及び1,9-遠隔不斉誘起グリニャ-ル反応では、3-(2-メトキシエトキシ)プロポキシル基をポーダンド基として用いることにより、それぞれ最高95%d.e.及び82%d.e.という類例のない高選択性で目的とする四級不斉炭素を有するδ-及びε-ヒドロキシエステルが得られた。 【2】従来に例を見ない高選択的遠隔不斉誘導機構を明らかにするため、本研究で提案するルイス酸立体制御ビナフタレンテンプレート錯体の構造及び安定性について、^1H-及び^<13>C-NMRを用いて検討した。その結果、予想通りケト及びエステルカルボニル基とポーダンド基とケイ基の両方がマグネシウムに配位している事が立証された。さらに、生成した錯体にエーテルを添加してMgBr_2に対する競争配位実験を行ったところ、錯体の安定性はポーダンド基とケト酸との組み合わせにより大きく異なり、高選択性を示すケトエステルは、錯体がエーテル存在下でも高い安定性を示すことが判明した。 【3】以上のように、研究実施計画に沿って検討を行い、前例のない高い選択性で1,8-及び1,9-遠隔不斉誘起グリニャ-ル反応を達成することが出来た。又、ルイス酸立体制御ビナフタレンテンプレート錯体の生成が立証された。今後、得られた高光学純度のδ-及びε-ヒドロキシ酸をキラルプールとして、有用天然物合成への応用を検討する予定である。
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