研究概要 |
ルテニウム(0)錯体であるRu(cod)(cot)はトリエチルホスフィンまたはトリエチルホスフィン存在下においてトルフルオロ酢酸アリルとの反応によりC-O結合が酸化的付加したルテニウム(πアリル)錯体Ru(π-C_3H_5)(OCOCF_3)(PR_3)_3(1;R=Me,2;R=Et)を与えた。同様にRu(cod)(cot)はトリメチルホスフィン存在下においてトルフルオロ酢酸(1-メチルアリル)の反応によりC-O結合が酸化的付加し、メチル基がアンチ選択的に付加したRu-(π-C_3H_4Me)(OCOCF_3)(PMe_3)_3(3)を与えた。 錯体2について若干の化学反応性を検討したところ錯体2は、1等量の一酸化炭素との反応によりアキシャル位のホスフィンと置換反応を行い、Ru(π-C_3H_5)(OCOCF_3)(CO)(PR_3)_3(4)を収率65%で与えた。さらに、錯体4は、1気圧の一酸化炭素と反応し、ルテニウムにアリル基がσ-型で配位した錯体Ru(σ-C_3H_5)(OCOCF_3)(CO)_2(PEt_3)_3(5)を収率77%で与えた。この錯体5は室温、ベンゼン中において4との平衡状態にあることが分かった。さらにこれらの錯体の求電子性および求核性に関する検討をおこなった。錯体2は、ベンズアルデヒドと反応し1-フェニル-3-ブテン-1-オールを定量的に与えたが,求電子試薬であるマロン酸ジメチルとは全く反応しなかった。しかし、錯体5はベンズアルデヒドと反応し、1-フェニル-3-ブテン-1-オールを10%与えるとともに、マロン酸ジメチルとも反応し、7%の収率でα-アリルマロン酸ジメチルを与えた。このように錯体5は、求電子試薬であるベンズアルデヒドとも求核試薬であるマロン酸ジメチルとも反応し、対応するアリル化生成物を与えることが分かった。
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