研究概要 |
ジテルペン系抗腫瘍抗生物質であるテルペンテシンおよびテトラテルペン系抗生物質であるメチルサルコフィトエ-トの合成研究を、分子内および分子間ディールスアルダー反応(Diels-Alder Reaction:D-A反応)を鍵反応として行った。 1.分子内D-A反応を鍵反応とするテルペンテシンの全合成研究 テルペンテシンの基本骨格であるトランスデカリン部分を合成した。その際、1,7,9-decatrien-3-one系の分子内D-A反応において、6位アルコキシル基の立体配置により、生成物であるシスデカリン骨格の橋頭位立体化学が完全に制御されることを見い出した。また、得られたシスデカリン骨格を、α,β-不飽和アルデヒドのシリル水素化を利用してトランスデカリン骨格に変換した。この方法は、デカリン骨格のシス-トランス異性化の新規方法となった。 2.分子間D-A反応を鍵反応とするメチルサルコフィトエ-トの全合成研究 14員環化合物どうしの分子間D-A反応により生合成されたと考えられているメチルサルコフィトエ-トの全合成にあたり、まず、14員環ジエンおよび14員環親ジエンのモデル化合物を合成した。ついでこれらの熱およびルイス酸存在下の分子間D-A反応について検討した。その結果、熱的条件下において、天然物と同じ立体配置のD-A生成物が主生成物として得られた。その際、親ジエン体側に存在する共役カルボニル基と共役エステル基のうち、共役カルボニル基に支配されてD-A反応の立体化学が制御される事が判明した。
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