研究概要 |
α,β-不飽和カルボニルモノマーのMichael付加型反応による重合を検討するためチオフェノールとベンゼンスルフィン酸によるアクリル酸エステルの重合についてしらべたところ比較的低温ですみやかに重合が進行することを確認した。次に有機ホウ素化合物による重合を検討するため、トリブチルホウ素による重合を検討した。アクリル酸エチル-60℃でもすみやかに重合し、ヒドロキノンによる重合禁止作用が認められないことから、この重合においては生長末端がラジカル種ではないことがわかった。 速度論的な解析においても非ラジカル機構で反応が進行することが確認され、開始反応はトリブチルホウ素のモノマーへのMichael付加型反応によることがわかった。 生長反応はジブチルホウ素が生長末端を移動するグループトランスファー重合と同様な機構で進行するものと推定されるが、この生長末端は不安なために2分子停止しやすいと考えられ、リビング重合に見られるような、重合率の増加にともなう分子量の増大は認められなかった。また、9-ボラビシクロ〔3.3.1〕ノナン(9-BBN)を開始剤としたときも同様にアクリル酸エステルは重合し、N-フェニルマレイミドも重合した。 次いでジブチルフェニルチオボランを合成して、これを開始剤とする重合を検討した。このホウ素化合物はα,β-不飽カルボニルモノマーとMichael付加型反応が進行することが認められ、重合を開始することがわかった。
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