研究概要 |
6年度はエチレンビステトラヒドロインデニルジルコニウムジクロリド-メチルアルモキサン触媒により得られる末端にビニリデン結合を有するアイソタクチックポリプロピレン(iso-PP)を利用してA-B型のブロック共重合体を合成することを試みた。プレポリマーとして、同触媒系により30℃で得られたiso-PP(Mn=5,300,融点114℃)を用いた。まず、末端のビニリデン結合をBH_3・Me_2Sによりトルエン中60〜70℃でヒドロホウ素化した後、反応溶液にBrMg(CH_2)_5MgBrを加え60〜70℃で2時間反応させることにより末端Grignard化iso-PPを得た。この末端Grignard化iso-PPをアニオン重合の開始剤としてメタクリル酸メチルの重合を-78℃から0℃の範囲で行うことによりiso-PPとポリメタクリル酸メチルとのブロック共重合体を得ることに成功した。 7年度は上記の手法をA-B-A型のブロック共重合体の合成に応用するために,ポリマー鎖の両末端にビニル基を有するiso-PPの合成について検討した。代表的なアイソ特異的重合触媒であるTiCl_3-AIEt_2Clによるプロピレン重合においてはZnEt_2が連鎖移動剤として有効に働き,末端亜鉛化iso-PPが生成する。我々は先にこのZn-ポリマー結合をN-メチルイミダゾール共存下で臭化アリルと反応させることにより,ほぼ定量的に末端ビニル結合に変換できることを報告した。そこで,ビス(7-オクテニル)亜鉛(BOZ)およびビス(3-ブテニル)亜鉛(BBZ)を合成し連鎖移動剤として用いることにより,開始末端にビニル基,停止末端に亜鉛を有するポリマーの合成を試みた。BBZ,BOZいずれもTiCl_3と組み合わせることにより,プロピレンの重合が進行し,融点約160℃のiso-PPが得られた。また,BBZおよびBOZ濃度の増大に伴いポリマー鎖数が増大することから,これらが連鎖移動剤として作用していることが示唆された。加水分解後のポリマーをNMRにより解析した結果,BOZで得られたポリマーにはビニル基とともに,BOZのオクテニル基の共重合により生成するn-ヘキシル側鎖の存在が確認された。一方,BBZで得られたポリマーにはビニル基は認められなかった。この原因は,ブテニル基にプロピレンが挿入した後に末端ビニル基の分子内挿入が起こり5員環構造を形成するためと考えられる。加水分解前に臭化アリルと反応させた場合には,BBZで得られたポリマーには停止末端に,また,BBZで得られたポリマーには開始・停止両末端に加え側鎖にもビニル基が導入されていることが明らかとなった。 今後は,このポリマーをブロック共重合体の合成に応用するとともに,両末端のみに選択的にビニル基を導入する方法についてさらに検討する予定である。
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