研究概要 |
オキセタン(Ox)モノマーは通常カチオン開環重合してポリエーテルを与える。例外的に3位にフタルイミドメチル基をもつOx誘導体(OxPI)を室温でBF_3と処理した後MeOHで停止すると,加水分解的にOx環が開環したジオールが唯一の生成物となった。この反応を過剰量のEt_3Nを加えて止めると,OxPIが異性化した架橋イミドアセタール(TCAA)とアセタール主鎖をもつポリマー(PAmA)が得られた。速度論的実験の結果、OxPIのイミドカルボニル基が隣接基関与して異性化した中間体モノマーのTCAAがカチオン開環重合する連続反応によってPAmAになることが分かった。この反応はOxPI以外の環状イミドの誘導体にも適応できるので,反応条件を制御すれば高収率で架橋イミドアセタールが得られ,イミドの対称性を破る方法として合成化学的にも有用である。更に,TCAAからPAmAへの変換過程は解重合を伴う平衡過程であることも分かった。一方、高温開始型のルイス酸を用いてOxPIを130℃で重合すると、見かけ上Ox環が開環重合したポリエーテル(PImE)が得られ,これはPAmAの構造異性体ポリマーになる。PAmAとPImEが混じって得られてくる60-70℃の境界温度範囲を除いて,低温では独占的にPAmAに高温ではPImEになり,ポリマーの構造が重合温度だけによって明確に作り分けられた。PImEもOxPIではなくTCAAを経てカチオン開環異性化重合していることが分かった。二種類の構造異性ポリマーはTCAAを共通のモノマーとして位置選択的にカチオン開環重合したことになる。開環の位置選択性は成長反応の速度論支配と熱力学支配の拮抗による可能性が高いと考えている。 以上OxPIのカチオン重合について得られたこれまでに類例のない特徴を、モノマー異性化・位置選択的カチオン開環重合という新概念として提案した。
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