研究概要 |
本研究課題は、ポリアミノ酸粒子の二次構造をより精密に制御することによって、有機分子の形態識別や光学分割などの分子認識システムを構築することを試みた。具体的には、粒子化時の温度,溶媒の極性,添加物によって、また粒子化後の表面処理によって二次構造を制御し、形成される特殊な空孔("molecular slit")への有機分子の取り込み及び水素結合やアミノ酸残基に基づくアフィニティに関する基礎研究を行った。さらに、化学修飾ポリアミノ酸粒子の生体関連物質の選択吸着能についても評価した。得られた結果を以下に要約する。 (1)合成ポリアミノ酸の粒子化条件の温度,多孔化剤,攪拌速度などを制御することにより、粒径10〜200μm、細大細孔径500以下(糖の分子量として)のミクロスフェアが得られた。このような手法により得られたポリアミノ酸ミクロスフェアの二次構造は主にα-ヘリックスを形成していることがわかった。 (2)α-ヘリックス型ポリアミノ酸ミクロスフェアは、30℃,24時間でギ酸処理あるいは220℃,20分で加熱処理することにより、その二次構造がα-ヘリックス型からβ-構造へと転移することが明らかとなった。 (3)α-ヘリックス型ポリアミノ酸ミクロスフェアは、ブタノール異性体や多環式芳香族化合物に対して、特異な保持挙動を示した。 (4)ポリアミノ酸ミクロスフェアのチトクロームCに対する特異吸着能は、ポリアミノ酸の二次構造がα-ヘリックス型からβ-構造へと転移するとともに著しく低下することがわかった。 (5)アミノ化ポリアミノ酸ミクロスフェアは、pH7.0,イオン強度μ=0.05〜0.4の条件下で、種々のタンパク質水溶液からエンドトキシンを選択吸着することがわかった。
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