円偏光を用いた分子選択的不斉光反応を解明するため、その試料合成、溶液中での反応、および測定系の立ち上げを行った。 1)光学活性色素の合成 光励起により不斉反転しうる色素として、ピレニルトリルスルホキシド、および ペリレニルトリルスルホキシドのラセミ体および光学活性体を合成した。合成した試料の光学純度を光学活性カラムで求めた。 2)溶液中における光不斉誘起反応の解析 光学活性ピレニルトリルスルホキシドに365nmの光を照射し、光励起不斉反転反応によるラセミ化過程を光学活性カラムで調べた。また、反応の進行に伴う旋光度の変化を調べたところ、反応の量子収率はおよそ0.1であった。しかし、さらに光照射長波および光量などの条件を最適化し、定量する必要がある。 3)過渡測定装置の立ち上げ 不斉前駆体色素の過度的不斉励起状態のダイナミクスを測定するために、本研究助成金でデジタルオシロスコープを購入し、YAGレーザーによる試料の励起、およびキセノンを光源とする参照光を測定する光学系を立ち上げた。また、測定したデータを処理するためのソフトウェアーを作製した。これにより、固相および液相系での不斉反転・不斉誘導挙動のダイナミクスの検討体制が整った。
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