研究概要 |
本研究の目的は、高分子鎖のin situ光架橋反応を利用することにより半相互侵入高分子網目の分子設計を行ない、その相溶性、モルフォロジーおよび物性について検討した。試料としてはスチレン(S)とクロロメチルスチレン(CMS)からなるランダム共重合体[P(S-ran-CMS)](Mw=260K,Mw/Mn=1.5)とポリ(ビニルメチルエーテル)(Mw=96K,Mw/Mn=1.8)のブレンドである。365nmの紫外光を照射するとP(S-ran-CMS)鎖上にラベルしたアントラセン環が二量化し、P(S-ran-CMS)鎖のみの架橋反応を誘発することができた。P(S-ran-CMS)/PVME(50/50)ブレンドの一相領域において、様々な条件(温度、組成など)下で光架橋した。得られた実験結果は次の通りである。 1)小角X線散乱、光光学顕微鏡および熱示差走査熱量計(DSC)より、相溶する半相互侵入高分子網目(Semi IPN)を設計することができた。 2)一方、曇り点の近くで光架橋をする場合、不安定領域は拡大し、架橋温度に達し、従来のスピノ-ダル構造が得られた。構造発展の照射時間依存性は単一指数関数であり、相分離過程がネットワークによって障害されていることを示唆した。 3)曇点とガラス転移温度の間で架橋する場合、特異的な同心円のモルフォロジー(Target Pattern)が観測された。また、このモルフォロジーの秩序性は組成に対して顕著な依存性も現われた。 一連の実験を行った結果、この特異的なパターンは反応・拡散機構の不安定性と、架橋反応に伴った弾性エネルギーとのカップリングで形成したことがわかった。 4)架橋反応動力学はKohlrausch-Williams-Watts(KWW)機構に従い、これらのポリマーブレンド内の架橋反応は不均一的に進行していることがわかった。 5)一定の架橋密度では、速く架橋する場合と比べて、よっくり架橋する方は、 Tanδの極大がより低温へ移動し、ネットワークの微細構造は架橋反応動力学によって支配されることを示唆している。
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