研究概要 |
本研究では,水蒸気支援重力排油法(SAGD法)による重質油の原位置採収法についての実験装置および縮尺油層モデルを製作し,測定データおよび画像処理システムの構築に重点を置き,SAGD法に関する実験手法(画像解析法を含む)の確立とその有効性についての検討を行った。 主な研究成果として,重質油の生産に重大な影響を与える水蒸気チャンバーの挙動分析に重点を置き,各種水蒸気圧入条件(圧入レート・圧入圧力)を変えて水蒸気チャンバーの可視化を実施し,チャンバー形状,成長速度,生産油量,採収率,SOR等の測定を実施した。さらに,赤外線サーモグラフィを使用した熱画像から水蒸気チャンバー内の温度状況を観察した。 その結果,水蒸気圧入開始から生産開始(ブレークスルーが生ずる)までの時間は,水蒸気圧入レートあるいは圧入圧力が高いほど短縮されブレークスルー時の水蒸気チャンバー面積は小さくなること,その拡大速度はブレークスルー前後で最大となること,水蒸気チャンバーの上方への成長はフィンガリング現象が支配的で水平方向への拡大はSAGD法の本質的な採収メカニズムが主要な役割を果たすこと,水蒸気チャンバーの境界温度がほぼ一定(本実験条件では80℃)であること,本実験条件に対する採収率は約0.5前後で積算SORは3〜6程度の値が得られたこと,などが明らかにされた。また,以上の実験結果に基づいた新たな経済性を重視したSAGD法として,シングル坑井からの間欠的な水蒸気の圧入と重質油の生産を行う方法を提案した。
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