研究概要 |
イネにおいて再分化機構を明らかにするため,再分化に関わる遺伝子を単離する目的で新たに考案したImmuno-subtraction法とRT-PCRによる簡易differential display(DD)法をイネの培養系に適用した. 1.簡易DD法 不定胚誘導カルス,不定芽誘導カルス,および再分化誘導前の未分化なカルスの3種類のカルスのmRNAからそれぞれcDNAを調整し,RAPDプライマーを用いたRT-PCRを行い,PCR産物によるdifferential screeningを行うという簡易DD法を考案した。簡易DD法により得られた再分化特異的クローン8個を用いてノーザン解析を行ったところ,再分化に特異的な発現が確認でき,本法の有効性が示された.また,本法によりクローニングされた遺伝子の半分以上が発現量の少ない遺伝子であることから、本法によりこれまでクローニングできなかったrareな遺伝子の単離の可能性が示された.今回クローニングされた8個の遺伝子のシークエンスを決定したところ,酵母のRNA helicaseやショウジョウバエのbithoraxoid regionとホモロジーの高いクローンがあることがわかった. 2.Immunosubtraction法 再分化誘導直前の未分化カルスの全タンパク質でウサギを免疫し,得られた抗血清を結合させたアフィニティーカラムを作成した。不定胚分化を誘導したカルスの全タンパク質をカラムに5回通し,非吸着タンパク質を再分化特異的タンパク質として回収・濃縮した.濃縮したタンパク質を2次元電気泳動で展開し、濃縮前のタンパク質と比較したところ,不定胚特異的タンパク質を検出できた.これら検出されたタンパク質は,subtraction前には検出されなかったものであり,本法が再分化特異的タンパク質の濃縮に有効であることが明らかとなった.
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