研究概要 |
低頻度で細胞集団中に存在する形質転換細胞のチミンダイマー修復量を測定するために,モノクローナル抗体を用いたELISA法あるいはイミュノPCR法によるチミンダイマー高感度検出法を開発した. 大腸菌の光回復酵素遺伝子および除去修復酵素遺伝子のイネホモローグPRHおよびERHの紫外線照射後の発現量とチミンダイマー修復量を調べ,両者の間に正の相関を示すホモローグPRH1およびERH1を選んだ.イネ縣濁培養細胞プロトプラストにエレクトロポレーション法によりPRH1あるいはERH1を含むプラスミドをカナマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドとともに直接導入した.カナマイシン耐性カルスはチミンダイマー修復能が高まり,多くはPRH1あるいはERH1を複数コピー発現していた.同様に,大腸菌の光回復酵素遺伝子および除去修復酵素遺伝子をイネプロトプラストに直接導入したところ,カナマイシン耐性カルスはチミンダイマー修復能が高まり,多くは光回復酵素遺伝子(phr)あるいは除去修復酵素遺伝子(uvrB)を複数コピー発現していた.しかし酵母の光回復酵素遺伝子をイネプロトプラストに直接導入した場合,光回復酵素遺伝子(phr)は発現したがチミンダイマー修復能は変わらなかった.さらに大腸菌phrおよびイネPRH1から保存性の高いアミノ酸配列(PIVDAAMRQL)を欠失させた突然変異遺伝子を作製し,イネプロトプラストに直接導入したところ,突然変異遺伝子のカナマイシン耐性カルスにおける発現は確認されたがUV耐性カルスは得られなかった. 以上の結果から,大腸菌光回復酵素遺伝子(phr)のイネホモローグPRH1はイネ光回復酵素遺伝子であると考えられる.なお,修復酵素遺伝子あるいはそのホモローグの導入によってUV耐性の高まった形質転換カルスから植物体を再分化させる試みは現在不成功に終わっている.
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