研究概要 |
イネのツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps UHLER)抵抗性の遺伝分析を行い,以下の成果を収めた. 1.近似同質遺伝子系統を用いたイネのツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子のマッピング 抵抗性品種「DV85」を供与親,感受性品種「金南風」および「台中65号」をそれぞれ反復親として戻し交配を繰り返し,それぞれの近似同質遺伝子系統であるXB4F2, LHB3F1を育成した.このうち,3集団のXB4F2における抵抗性検定の結果,抵抗性個体と感受性個体は103 : 81に分離し,独立した2個の優性補足遺伝子を仮定した場合の理論分離比9 : 7に適合した.そこで, XB 4F2 8とXB4F2 20の2集団において,DNAマーカーと抵抗性との連鎖分析を行ったところ,両集団とも染色体3上のDNAマーカーであるXNpb144は抵抗性と密接に連鎖していた.またXB4F2 20の集団においては,染色体11上のDNAマーカーであるXNpb181とG1465で抵抗性との連鎖が見られ,とくにG1465に関しては密接に連鎖していた. 2.組換え自殖系統を用いたツマグロヨコバイ抵抗性の遺伝分析 金南風とDV85との交雑に由来する組換え自殖系統を用いてツマグロヨコバイ抵抗性の分析を行ったところ,抵抗性個体と感受性個体は34 : 84に分離し,独立した2個の優性補足遺伝子支配を仮定した場合の理論分離比1 : 3に適合した. 以上の結果から, DV85の示す出穂期前後のツマグロヨコバイ抵抗性は独立した2個の優性補足遺伝子に支配されており,そのうち1個は染色体3上のXNpb144の近傍に位置づけられ,もう1個は染色体11のG1465の近傍に座乗する可能性が高いと示唆された.
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