研究概要 |
地球環境の変化に伴い今後世界的に乾燥地域がさらに拡大することが予想されることから,バレイショの高い生産力を維持するためにな根の水分吸収に関与する要因の解明が緊急の課題となっている.本研究では,根量の異なるバレイショ新旧2品種を供試し,雨避けの簡易シェルターを設置した圃場で潅水と無潅水の水分処理を行い,深さ1.5mまでの土壌水分圧および根の分布と量,葉の蒸散速度と光合成速度,ならびに全体の生育と収量を調査した.さらに,品種の耐乾性に及ぼす根の生長の役割を地上部の要因と独立して評価するために,2品種の地上部と地下部を穂木あるいは台木に用いた接木個体を作成して上述の調査を行った.得られた結果の概要は下記のとおりである. 1.無潅水区では,生育の進行に伴い浅い土層から深い土層へと順次乾燥が進み,地上部最大期には深さ150cmでも土壌水分圧の低下が認められた. 2.全体の根量に及ぼす水分処理の影響は小さく,品種間の差異も変化しなかった.しかし,根の分布は水分処理によって変化し,潅水区に比べ無潅水区では深さ0-20cmの根量が少なく,深さ20cm以下の根量が多かった.さらに,根量の品種間差異は,潅水区では深さ0-20cmで,無潅水区では深さ20-70cmで大きかった. 3.無潅水区では葉面積の増加,蒸散速度および光合成速度が低下し,乾物生産が抑制され,塊茎収量が減少した.減少の程度は,根長の少ない品種で大きかった. 4.根量の品種間差異および無潅水区での生育の抑制は,主として台木の種類によって影響された. 以上のことから,根の生長の品種間差異は主として地下部での乾物分配特性の差異に起因し,耐乾性と密接に関係していると結論した.
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