研究概要 |
1.秋田県内37ケ所から収集したシロアズキ(Vigna angularis)の在来品種を用いて,主として分枝性に基づく系統間変異と収量性との関係を検討した. 個体当たり子実重,総節数,総莢数,総粒数は系統間で有意な差を示し,その差は主茎より分枝の系統間差に強く依存した.分枝数も系統間で有意な差を示した.個体当たり子実重と主茎・分枝別の収量構成要素との関係をみると,節当たり莢数と一莢粒数は,主茎・分枝ともに個体当たり子実重と密接な関係を示したが,百粒重は関係が小さかった.主茎・分枝別の収量構成要素と分枝数との関係において,分枝の多い系統ほど主茎百粒重が小さくなる傾向がみられたが,他の要素では相関関係がみられなかった.収量構成要素の値の分枝/主茎比と分枝数との関係では,分枝の多い系統ほど百粒重での比の値が大きくなる傾向がみられた。 これらのことから,シロアズキの在来系統群においては,分枝性が収量構成要素に直接働きかけて増収効果をもたらす方向へは系統分化が進んではいないと推論した. 2.秋田県内で収集した在来系統(10系統)を用い,形態・収量性の特徴の違いと在来地域との関連を調べた.収量構成要素は,百粒重と個体当たり粒数で特に系統間差異が大きく,その粒数百粒重比(1株粒数/百粒重)をパラメータにして,粒大型,中間型,粒数型の三つの型に類別された系統群と形態的特性との関連では,個体当たり分枝数は粒数型系統群で多く,粒大型系統群で少なかった.生育相の特徴をみると,栄養成長期間については,粒数依存の大きい系統ほど長くなる傾向があり,結実期間については系統間で差がみられなかった.また,これに関連し,全系統を通じて,栄養成長期間と生殖成長期間の併進性が大きく,改良品種に比べて結実期間が長期化する傾向が強かった.なかでも,粒数依存系統群は莢の成熟斉一性が低く,個体内での子実の成熟不揃いが大きいために,子実の脱粒率が高くなった. 諸形質の系統間差異と栽培地の気象要因との関係をみたところ,個体当たり分枝数と粒数は,栽培地の積算日照時間(過去16年間の育成期間中の月別平均値)との間で高い正の相関が,一方,百粒重は積算温度(過去27年間の同様の平均値)との間で高い負の相関が認められた.
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