研究概要 |
桜島町における作物収量は,桜島南岳の噴火活動が活発となった昭和47年以降急減した。とくにサツマイモにおいては,桜島町収量/鹿児島県平均収量比と年間推定総降灰量との間に有意な負の相関関係が認められた。また,桜島周辺市町の作物収量収量は,桜島に向かって後方に位置する市町のそれよりも劣っていることがわかった。降灰量の多少が,桜島および周辺市町の収量と密接に関わっていることを示している。 桜島南岳を中心とする半径40kmの範囲に栽培されていた数種作物葉の気孔抵抗を測定したが,気孔抵抗と距離との関係は不明瞭であった。ただし,火山灰が体積した葉では蒸散量の減少と堆積火山灰による日射吸収量の増大のために,著しい葉温の上昇が起こることがわかった。光合成の適温以上に葉温が上昇した場合には,遮光による光合成量の低下に加えて高温による光合成の低下も起こることを示している。 火山灰堆積下にある葉では上記のような光合成低下が起こるにも関わらず,実際の生育量の低下は葉に直接火山灰を堆積させた場合よりも,被覆面を介して間接的に堆積させた場合において顕著であった。この違いは,降灰後に展開した葉がおかれた光条件の違いによっていた。被覆面下に長期間にわたって火山灰が堆積した場合には,除灰後の生育量も減少することが示された。 耕地土壌への火山灰混入量が高まるのに伴って作物の生育量および収量は低下した。株元に普通土壌を集中的に配置したときの生育量および収量は,同量の普通土壌を火山灰中に混和したときのそれらよりも勝ることが,ポット実験および現地適用試験で実証された。集中配置した普通土壌の面積および深さとの間には飽和型の曲線関係が認められた。土壌の置換効果を最大とする‘適切な'面積および深さが存在することを意味する。
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