研究概要 |
イネ個体群の窒素利用様式の遺伝的変異とそれが乾物生産力および籾収量に及ぼす影響を明らかにするために圃場実験を行い,下記のような結果を得た.(1)品種日本晴を4年間,3窒素施用量×3固体密度の条件で栽培し,個体群窒素保有量と乾物生産力形成の関係を解析したところ,窒素保有量と乾物生産力(受光率×日射乾物変換効率)との量的な関係は,年次・栽培条件をとわず安定的であり,両者の関係が単一の曲線で表された.(2)内外の新旧品種を含む64品種系統の窒素利用様式を比較した.日本晴を基準として,吸収窒素当たり籾収量には-35〜+24%の変異がみられ,近年の多収品種が高い収穫係数によって最も高い効率を示した.吸収窒素当たり乾物生産量には-11〜+14%の変異があり,近年の多収品種だけでなくいくつかの中国在来イネが高い乾物生産効率を示した.(3)上記多収品集および中国在来イネを含む数品種について,窒素利用様式の違いと乾物生産力を比較した.保有窒素の葉面積展開と葉身窒素濃度との間の配分には,著しい品種間差異が存在し,窒素供給が著しく制限される場面では葉面積展開を優先して受光率を高めることが,十分な窒素供給のある条件では葉身窒素濃度が高く維持して日射乾物変換効率を高めることが,それぞれ乾物生産にとって有利であると考えられた.F1多収品種は,同様の葉身窒素濃度を有する日本晴に比べて日射乾物変換効率が高かった.
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