研究概要 |
1。Fusarium oxysporum菌の形質転換と細胞融合に関する研究 植物病原菌F.oxysporumの寄生性分化を明らかにするため、まずF.oxysporum f.sp lycopersiciの薬剤耐性マーカーとして抗生物質HygromycinB耐性遺伝子を含むプラスミドpHL1をPEG法によりプロトプラスト細胞に導入し、HygromycinB耐性株を得た。これらの菌株について遺伝子解析し,耐性が強く、強い病原性を示す菌株のR7-HygBを得た。また、F.oxysporum f.sp.cucumerinumでは,発芽胞子をNovozyme234によって処理した後、直接的遺伝子導入法でプラスミドpHL1をエレクトロポレーションにより形質転換し、HygromycinB耐性の形質転換体を得た。これら形質転換体は野性株と同様に高い病原性を示した。 2。トマト萎ちょう病菌の病原性因子に関する研究 トマト萎ちょう病菌F.cyxsporum f.sp lycopersiciは、病原性因子としてフザリン酸とともに多くのペクチナーゼを産生する。その一つとしてポリガラクツロナーゼ性状について調べた。親株の変異原処理により、親株に比べて非常に病原性が弱い変異株OW932を作出し、活性分析を行った結果、変異株OW932にはポリガラクツロナーゼのバンドが殆ど見られず、本菌が産生するPGが重要な病原性因子であると推定された。そこで、本酵素を精製した後、SDS-PAGEおよび等電点電気泳動で分析した結果、4つのアイソザイムパターンを示した。また、植物組織内の病原菌PGの分布を精製PG抗血清を用いた結果、萎凋病感染組織内の維管束部においてのみPG反応が検出された。このことから,トマト植物の維管束壁部分がトマト萎凋病菌が産生するPGにより溶解されることが萎凋症状の一因であると考えられた。
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