まず、不安定かつ微量なインドール酢酸(IAA)を低い損失率で、しかも出来るだけ他の成分を含まない状態で集め、定性・定量することについて、種々検討を重ねた結果以下の方法が有効なことが判明した。 植物メタノール抽出(内部標準:インドール酪酸)→TLC→PVPカラム→GC→GC・MS ついで、本法により、ハツカダイコン幼植物中の結合型IAA(1M-MaOH、室温、1時間加水分解)含量の化学的定量を行った。その結果、亜鉛欠乏区の結合型IAA含量は遊離IAA含量と同様、対照区のそれらと大差が無いことが判明した。 一方、水稲を供試し、種々な亜鉛栄養下でオーキシンによるカルスの誘導形成について調べ興味深い結果が得られた。すなわち、高濃度オーキシン下で、誘導形成されるカルスの量は、亜鉛量とほぼ正比例関係があることが認められた。 さらにこれらの結果を総合し、"植物における亜鉛は、オーキシンの生理活性発現に密接な関係がある"との仮説を考えるに至った。 細菌、オーキシン結合蛋白質やジンクフインガー蛋白質の存在が報告され、注目を集めている。これらの蛋白質の発見と我々の作業仮説を関連ずけて考えるとき、亜鉛の生理機能解明に、ますます興味がわく。
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