研究概要 |
本研究は,著者らの発見したペプスタチン非感受性カルボキシルプロテアーゼ(CP)の構造・機能解析の一環として,Pseudomonas sp. CP (PCP)とXanthomonas sp. CP (XCP)の2つに的を絞って,これら酵素の触媒残基を遺伝子工学的手法と化学修飾法を駆使して同定することを目的とする。これらのCPは、原核生物由来の最初のCPで,その全一次構造は,既報のCPと全く相同性がなく,また,既報のCPに例外なく保存されている活性中心アミノ酸配列もない極めて特徴の高いCPである。 1.触媒残基の同定(部位特異的改変体を使用して):PCP(372アミノ酸残基)とXCP(398アミノ酸残基)は,上述のとおり既報のCPと全く相同性がないが,互いには約52%の相同性を有する。この高い相同性に基づき,候補部位8ケ所について,合計11種のAla変異体を作成し,自己触媒的プロセッシングとプロテアーゼ活性を指標に触媒残基の同定を試みた。これら酵素の触媒残基は,D170,E217,E222,D328の4つの候補部位のうち,立体的に隣接した一対のカルボキシル基であることが強く示唆された。 2.触媒残基の同定(チロスタチンを応用して):特異的阻害剤チロスタチン(Isovaleryl-Tyrosyl-Leucyl-Tyrosinal,Ki=2.5nM)の阻害部位Tyrosinal側に酵素の触媒残基のカルボキシル基と共有結合できるようにエポキシ環を付け,そのペプチド鎖の長さを変えた4種類の阻害剤の効果を調べた。ペプチド鎖の最も短いZ-Phe-O-CH_2-Epoxideが阻害活性を示し,その阻害は拮抗型であることが判明した。 著者らが発見したペプスタチン非感受性CPの構造・機能解析の一環としてPCP,及び,XCPの触媒残基の同定を2つの方法で解析を加え,あともう一歩という段階に至った。平成8年度には,結論を得たい。
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