研究概要 |
1.大腸菌グルタチオン生合成遺伝子(gshI,gshII)の取得および生合成能強化大腸菌株の作成: 配列既知の大腸菌gshI,gshII遺伝子の両端をプライマーとしてオリゴヌクレオチドを合成し,PCR法により両遺伝子を増幅し,発現ベクターpuc18へ挿入後,MV1184株へ形質転換し,グルタチオン生合成能強化大腸菌株を作製した。作製した強化株は野性株と比べてGSH-Iで21.5倍、GSH-IIで475倍にまで活性が上昇した。2.生合成能強化大腸菌株の膜透過性付与: 0-10%トルエン中,25℃,1hrで強化大腸菌株を処理し,グルタチオン蓄積能を検討した結果,4%前後で蓄積能は最大となった。処理菌体は-20℃で約1.5年間は安定であった。3.異種生物共役系(グルタチオン生合成系強化大腸菌-好温性ラン藻混合系)の構築: 大腸菌gshI,gshII強化株の混合比は重量比で30:1(活性比で1:3)が最適であり、また大腸菌とラン藻生菌の最適混合比(重量)は1:1であった。最適条件下でのグルタチオン生産能は6時間でラン藻湿重量当たり約7μmolに到達した。これは、現在工業的に用いられている酵母からの抽出系と比較して約1.5倍高い生産量である。しかも生成したグルタチオンの大部分は菌体外に分泌されており、生産系として極めて好都合な特性を示した。4.大腸菌グルタチオン生合成遺伝子のラン藻細胞への導入の試み: ラン藻細胞内での自己共役系によるグルタチオン生産系を確立するために、大腸菌グルタチオン生合成遺伝子gshI,gshIIをラン藻(Synechococcus sp. PCC7002)-大腸菌シャトルベクターpQCxを用いてラン藻細胞内への形質導入を試みた。集菌直前に浸透圧ショックを与えることにより高い形質転換率が得られることが判明した その他,グルタチオン構成アミノ酸の生合成系に関する検討を行うために,これら代謝系に関与している酵素群の基礎的解析も行った。
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