研究概要 |
移動運動補償装置は,昆虫を球体上に置きその動きと逆方向に球を回転させることで、仮想的な無限平面上での昆虫の動きを継続的に記録する装置である。1975年に登場して以来,様々な研究者により多くの成果をあげてきた。ところが我が国ではほとんど省みられず,実証を目的とした装置が一台だけ試作されたにとどまっている。本研究者は,新たにNC移動運動補償装置LC-1を設計・製作するにあたり,その制御システムを根本的に見直すことから開始した。まずリモートセンターに汎用のビデオトラッカーを使い,供試虫を画像処理で自動追尾しながら刻々の座標位置を報告させる。コンピューターは,座標に駆動パスルへの変換比を乗じてモーター制御基板に書き込み,水平に直交して配置したX-,Y-2軸のACサーボモーターに位置制御をかける。虫の乗る球体は自在ベアリングと,モーター軸に直結したローラーの計3点で支えられていて,モーターの運転につれて回転する。ここで球体上の虫の位置が常に原点に戻るように,供試虫の観測位置に機械的に負帰還をかければ,所期の目的を達することができるはずである。この数値制御システムは,ビデオトラッカーに高速CPUを持つパーソナルコンピューター,インテリジェントなモーター制御基板とディジタルACサーボモーター等、最新の機器を有機的に結合することによって,初めて実現か可能になった。その結果,滑らかでかつ迅速な応答を併せ持つ,高性能機が完成するに至った。また本研究の目的は,実際の行動観察に十分耐え得る計測システムの構築にあたる。そのため装置の使い易さと保守を充分に考慮して,特にデータ解析プログラムは操作性を重視して,GUIを取り入れたものにした。最終年度はこのデータ解析プログラムと気流・試料導入系を完成して,行動制御物質の検索システムとして確立させた。
|