種々の味は物質が舌の上皮に何らかの作用を及ぼすことによって感じられる。基本味のうちいくつか(甘味と苦味)は味覚細胞内のセカンドメッセイイジャーの濃度を上昇させることにより、それらの味の受容にはGタンパク質と共役している七回膜貫通型のレセプターの関与が示唆される。我々は既にラットにおいて、舌の上皮に発現する七回膜貫通型のレセプターの存在ならびに構造を明らかとしており、そのレセプターが味覚に関与するものであるとの報告を行っている。本研究においてはそれらの知見をもとに、ヒトにおいて同様のレセプターを発見し、その味覚への関与の機構について明らかとすることを目的に実施された。 まずヒトの舌上皮の味蕾をよりmRNAを調製し、cDNAを合成した。これをテンプレートとしてPCRを行った。プライマーにはラットの味覚レセプターであるGUST27由来のもの、視覚のレセプターであるオプシン由来のもの、Gタンパク質共役型レセプターに共通のコンセンサスシークエンス由来のもの等多数のものを用いた。そうしたところフラグメントが増幅されたものがいくつかあり、それらの塩基配列を決定した。得られたフラグメントの塩基配列から推定されるアミノ酸配列中にはGタンパク質共役型レセプターに見られる疎水性あみの酸からなる膜貫通領域と推定される部分が存在したことから、これらのものがGタンパク質共役型レセプターのフラグメントであると決定した。in situハイブリダイゼーションの結果より、これらが味蕾を中心とした舌上皮に発現していることが判明し、このことより味覚に関与するレセプターであると期待される。現在このクローンの全長を得るべく、PCRを用いて検討を行っており、良好な結果が得られつつある。全長のクローンが得られ次第、バキュロウィルスを用いた発現系を用いてレセプターの機能を明らかにしていく予定である。
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