研究概要 |
澱粉製品の中には消化を受けず,大腸に達する澱粉成分の存在(難消化性澱粉:RS)が認められている。こうした食事成分は,食物繊維(DF)と同様に腸中環境の制御を介して生体機能調節に寄与していると考えられる。本研究においては,まず,ハイアミロースデンプンから老化デンプンを調製し,アミラーゼ処理によりRSを得た。次に,Wistar系雄ラットを用い,セルロースパウダー(CP)を対照として,調製RSとコンニャクマンナン(KM)および市販ペクチン(PE)をDFレベルとして4%および8%となるように実験飼料に添加し,食事成分としてのRSの生理効果をDFと比較検討しながら腸内環境の制御効果の観点から検討した。RSは、不溶性の食物繊維でありながら,PEやKMのような水溶性の食物繊維同様に盲腸内で発酵を受け,短鎖脂肪酸の産生により盲腸内pHの低下に寄与していた。また,8%RS群においては,血漿コレステロール,トリグリセライドレベルの有意な低下が認められ,肝臓のコレステロール,トリグリセライドおよび総脂質含量も有意な低下が認められた。胆汁酸の糞中排泄については,RS群,KM群で低い傾向であったが,PE群では逆に高い傾向があった。コレステロールの糞中排泄については,CP群に対して他の群で高い排泄傾向が示され,特に8%PE群において高かった。しかし,コレステロールの二次代謝物であるコプロスタノールの糞中排泄量は,CP群で高く,他の群では有意に低く,DFレベルの増加はより顕著な低下をもたらした。中性ステロイドとしての排泄量は,CP群に対して8%RS群,8%KM群では低い傾向が,8%PE群では高い傾向が認められた。PEの効果は,胆汁酸やコレステロールの排泄増加(吸収抑制)に基づく結果であるのに対して,RS群の効果はこれらの排泄増加に基づくものではなく,腸内環境の改善を介した生体内変換の抑制効果によることが示唆された。
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