研究概要 |
樹木の重量成長にともなう個体の呼吸量の増大について,針葉樹3種の幼少個体を用いてとくに根系の呼吸量に着目して検討をおこなった.個体あたりの地上部と地下部の呼吸速度は,それぞれの重量成長にともない,アカマツとスギでは直線的に上昇するが,カラマツでは成長期の終盤にかけて上昇が鈍くなり,とくに地下部においてその傾向が顕著であった.これは,葉の単位重量あたりの暗呼吸速度が低下することや非同化器官の旺盛な肥大成長により木部組織の内部に呼吸活性の低い組織が形成されることに起因すると見られた. 個体あたりの地上部と地下部の呼吸速度との間には,成長時期あるいは成長段階が異なっていても,樹種ごとに直接的な関係が成り立っていた.直線の勾配は,ほぼ地下部の呼吸量に対する地上部のそれの比率を表すが,スギで大きく,次いでカラマツであり,アカマツで最も小さかった.この比率は,T/R率の影響を直接的に受けるが,T/R率は経時的に大きく変化するので,重量あたりの呼吸速度の経時的変化も大きく関与して直線的関係をもたらしていると見るべきである.樹木では,年数を経た個体の根系の呼吸量を正確に測定することはきわめて困難であるので,もし根の呼吸量と地上部の成長量あるいは呼吸量との間に一定の関係が成立するなら,高い精度で推定できることになる.その意味で,ここでの検討結果は,大いに示唆的である. 林木成長にともなう諸器官の成長量と脱落量の検討結果をもとに,森林が本来的に保持するとみられる「持続的生産システム」について考察をおこなった.考察の概要は,以下のようにまとめられる.森林の現存量(B)は,森林が成熟段階に入ると次第に増加が抑えられ最大値(B_<max>)に近づく.その際,総リター量(L)は引き続き上昇する.物質収奪曲線は(B+L)で表される.林地には,当世代のリターとともに,すでに全世代からのリターが供給されており分野減少の過程(L^*)にある.当世代のリターは,やがては供給速度と分解速度が同じレベルになると考えられるので,物質還元曲線(R)は(B_<max>-L^*+L)で表される.森林の更新・発達における物質交代は,総還元量が総収奪量を上回る,所謂先行投資の形で進むが,最終的には総収奪量が総還元量を収斂し両者が均衡する段階にはいる.
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