近年釣りがきわめてさかんで、その釣獲量はかなり大きいものと考えられる。漁獲対象資源の管理の強化が叫ばれる今日、資源管理に遊漁を無視することはできない。本研究は東京湾を対象として、漁獲対象資源の現状を明らかにし、また、釣獲の実態を把握して、資源管理に際して考慮すべき点を検討することを目的とした。 東京湾の漁獲対象資源は多くのものが低下傾向にあり、漁獲量の低下となって現れている。これは試験底曳で明らかになった湾内での生物量の減少が影響していると考えられる。なんらかの環境の変化が起きていると思われるが、この原因を現時点で一義的に定めることはできない。しかし、一旦回復した水質が近年またやや悪化傾向にあるようで、今後さらに検討が必要である。 一方、遊漁は近年ますますさかんで、東京湾も年間延べ500万人程度の出漁が推定された。1人当たりの釣獲を5Kgとすると年間で2.5万トンの釣獲量となり、近年の総漁獲量に匹敵する。ただ、数種について種別に年間釣獲量を推定すると、マアジは漁獲量に匹敵するが、それ以外のアナゴ・カレイ・マダコについては年によって、また、季節的に釣獲量が漁獲量に匹敵する場合も見られるが、概して釣獲量は漁獲量よりかなり低い。 現在のところ推定の精度にも問題があり、全体的な影響と種別の影響で必ずしも整合性の取れた結果が得られなかったが、漁獲対象資源の減少もあり、今後の資源管理に遊漁を無視することはできない。管理に遊漁の釣獲量を考慮する前提として、釣獲量の信頼できる推定値が必要で、今後の最重要課題と言えよう。釣人乃至船宿に釣獲量についてなんらかの申告をさせることを今後検討する必要があろう。
|