研究概要 |
1993年7月から1994年6月(卵・仔稚魚調査)および1994年9月から1995年8月(仔稚魚調査)までの期間に,三重県英虞湾内2地点,湾外1地点で三角中層稚魚ネットの昼間水平傾斜曳きによる浮遊性魚卵・仔稚魚の採集を行い,英虞湾周辺海域の魚卵仔稚魚相,仔稚魚群集の動態などについて,以下のような知見を得た. 1.採集された魚卵は9月29科43分類群以上53739粒,仔稚魚は18目69科178分類群以上18710個体であった.採集された仔稚魚の内,従来記載が皆無であるものや断片的なものについては,詳細な形態記載を行った. 2.魚卵は,分類群数,卵数ともに,湾外が多く,湾の奥に向かってともに減少する傾向がみられた.季節的には,湾内では夏に分類群数,卵数とも多く,冬には極めて少ない現象が,湾外では分類群数に春から夏にかけて多く,卵数は春と秋に多い減少がそれぞれみられた. 3.仔稚魚については,全体的に,分類群数は夏から秋に多く,個体数は春から夏にかけて多い傾向がみられた.また,分類群数は湾外で多く,湾の奥に向かって減少する傾向が見られた.個体数は前屈曲期までは湾内で多く,屈曲期以降は湾外で多く,湾内で孵化した仔魚の一部は,仔魚期に湾外に出ることが示唆された. 4.仔稚魚群集の多様性は,全体的に湾外で高く,湾内で低い傾向がみられた.また,季節的には夏に高く,冬に低い傾向が見られた.湾内2地点の群集の類似性は高く,これらと湾外との類似性は低かった. 5.湾内ではネズッポ科,ハゼ科Type6,アミメハギが卓越する夏-秋相と,カサゴが卓越する冬-春相に,湾外では分類群数が多くその組成も複雑であるが,概ね,カタクチイワシが卓越する春-夏相,多くのスズキ目仔稚魚が増加し多様性を増す夏-秋相,カサゴおよびカサゴ目仔稚魚が多い冬-春相に大きく分けられた.
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