研究概要 |
ヒスタミンはアレルギー様食中毒の主因物質として重要である。本研究では、鮮魚貯蔵中および水産発酵食品におけるヒスタミン(Hm)蓄積の機構をHm分解菌の役割に注目して調べ、次のような結果を得た。 マサバを5℃および30℃で貯蔵した際のHm量、Hm分解菌数およびHm生成菌数の消長を調べた結果、貯蔵中期以降にHm量が減少する傾向はHm分解菌によっていること、またその分解活性にはHm分解菌数やpHなどの影響が大きいことを明らかにした。また、このHm分解は主にPseudomonas putidaによるものであった。 マサバの5℃および30℃貯蔵中におけるHmおよびTym,Put,Cad,Agm,Tpm,Spdなどのポリアミンの消長を測定した結果、これら各成分の消長が試料により異なり、統一性がみられないことから、ポリアミン類を魚介類の鮮度指標として用いることは難しいと結論した。 くさや汁では、Hm生成菌がほとんど検出されず、Hm分解菌が10^4-10^6/ml存在し、pHが中性であることから、Hmが蓄積されにくい環境であると考えられた。魚醤油ではHmが高濃度検出され、Hm分解菌はほどんど確認されず、食塩濃度10%以上の環境でも増殖するHm生成菌の存在が確認された。イカ塩辛では、Hm分解菌およびHm生成菌が熟成期間中ほとんど確認されず、Hmもほとんど蓄積されないことから、本食品におけるアレルギー様食中毒発生の可能性は低いことがわかった。
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