研究概要 |
東京都、大阪市、京都市、名古屋市、盛岡市などの青果物の中央卸売市場での実態調査に基づき、市場流通の動向と卸売業者及び仲卸業者の機能の変化の要因について考察した。卸売業者は手数料商人としてセリ取引を原則としていたが、先取販売や予約取引・予約相対取引などの取引が増加している。また、仲卸業者は分荷機能を専らとし、小売業者に販売していたが、量販店との取引を増やし仕入・品揃機能に重点が置かれるようになった。これらの機能の変化は、産地の生産構造の変化及び消費地の小売構造の変化に対応するものであり、欧米諸国の青果物の市場外流通の隆盛とも軌を一にするものであることが解る。但し、我が国の青果物の産地は相対的にはまだ零細であり、チェーン化した大規模スーパーマーケットが支配的な訳でもないので、市場流通が直ちに衰退するとは考えられない。 卸売業者及び仲卸業者の経営分析を試み、流通経費及び収益性を検討した。卸売業者では流通経費の45%が人件費であり、仲卸業者では57%が人件費である。また、販売額規模が小さいほど人件費の割合が大きくなる傾向がある。卸売業者及び仲卸業者の売上高総利益率(それぞれ7.2%,10.1%)及び売上高経常利益率(それぞれ0.6%,0.1%)は著しく低いので、ともに経営を安定させるためには取引数量を確保することが重要となる。卸売業者は、委託販売を旨として大型産地からの荷引きに力を入れるとともに、他方では買付集荷の割合を高め、取引数量の確保に努めている。仲卸業者は、小売業者に分荷販売しているが、とくに量販店への販売に努め、取扱数量を確保している。卸売業者及び仲卸業者の収益性は概して低く、とくに販売規模の小さな仲卸業者の収益性は著しく低い。今後労働生産性を高め、収益性を改善することができなければ、仲卸業者の再編が進むと考えられる。
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