研究概要 |
戦後実施された干拓事業の現況について実態調査を行った.調査項目は干拓地の所在地,干拓種別,干拓方式,基礎地盤調査,堤防形式,築堤材料,潮止め工法,堤防工,造成面積,過去の災害被災状況等である。完了地区は直轄事業63地区,代行事業104地区,補助事業54地区となっている.また,海面干拓の事業数は湖沼面干拓のそれより1.76倍多いが,造成面積に関しては,この関係は逆転し1.74倍となっている.すなわち、,湖沼面干拓の方が規模が大きくなっている. 次に,築堤材料と基礎の土質について調べた.築堤材料,基礎地盤が共に砂質土からなる地区は56地区,地盤が砂質土の地区は35地区,堤体が砂質土の地区は40地区となった.また,九州,中国四国管内に多く,この管内で91地区あった. 次に,道路橋示方書の距離減衰式を用いて,各地区の地震加速度を求めた.一般に,気象庁震度階で震度IVまでは液状化の危険度は無く,震度V以上で液状化が生じ,地表面加速度で100ガルを越えると被害が発生するとみなされている.推定地表面最大加速度が100ガルを越える地区は地盤条件をII種地盤とした場合223地区,III種地盤とした場合209地区となった.また,統計年間を400年として100年期待値加速度を求めると,100ガルを越える地区はII種地盤とした場合188地区,III種地盤とした場合144地区となった.さらに,これらの地区で砂質度が関係する地区は,II種地盤とした場合104地区,III種地盤とした場合76地区となった.以上より,大半の地区で何らかの液状化対策が必要であることがわかった. 最後に,干拓堤防の液状化対策工について考察を行い,海岸保全事業や海岸環境整備事業等では出来る限り堤防断面を大きくし,液状化が生じて,堤防が変形しても堤内が冠水することの無いように心掛けることが基本であることを強調した.
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