研究概要 |
本研究成果は第1編,第2編および第3編の3部構成となっている。 第1編では,雑草群落の生活値モデルを雑草種子数を状態変数とする力学系として定式化した。このモデルでは農作業が構成要素として取り込まれており,除草作業・耕耘作業などを記述することができる。雑草の発生,成長,結実から秋耕,越冬,春耕にいたる1年間のプロセスが統一的にモデル化されている。雑草群落の発芽率・成長速度・繁殖率などの生理・生態学的パラメータと,耕耘による雑草種子移動のパラメータが全く対等に取り扱われている点が特徴である。これによって,包括的な雑草管理の戦略が指示された。 第2編では,第1編で提示した雑草群落の生活史モデルを高次元の力学系モデルに拡張し,実際の耕耘作業をモデル化できるようにした。さらに,耕耘試験によって種子の移動に関するパラメータを同定した。これらを基に,パラメータスタディを行い,プラウ耕の耕深を毎年同一で作業するのではなく,異なる深さを組み合わせることによって,経年的にほ場の雑草種子数を減少させ得ることを示した。 第3編では,雑草群落における発生・成長・種子生産を定式化して,年間の種子生産モデルを構築した。サブモデルである発生・成長・種子生産パターンを実験的に同定した。これらを基にパラメータスタディを行い,除草時期を最適化することにより,大幅に生産種子数を低減できることを示した。 本研究では申請時の研究目的と研究実施計画は達成できた。開発されたモデルの入力パラメータデータベースのさらなる蓄積と,実際の多様な作業体系を想定した広範なパラメータスタディによって,雑草管理を目的とする農作業の最適化設計に使用できる。
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