1972年以来、雨水のpHの測定を継続しており、年々酸性化が進行していることを明らかにしてきた。本研究においては、雨水の酸性度の測定・解析とともに、59種の植物(樹木8種、農作物14種、花卉植物13種、雑草24種)の葉および33種の花弁(44種の花色)を使って、人工酸性雨接触実験を行い、障害の実態を検討した。 1.各種pH溶液5時間処理によって、59種葉のうちpH2.5で1種、pH2.0で42種、pH1.5で55種の葉に変色がみられ、2/3以上の種が障害を受けるpH値は2.0であった。これらの障害の程度は植物種によって著しく異なっているが、樹木種では他の植物種よりも低いpH値で障害が発現する傾向がみられた。障害の現われやすい葉はサツマイモ、インゲンマメ、サルビアなどであり、障害が現われにくい葉はキャベツ、クスノキ、オオムギ、クズ、ヨモギなどであった。 2.花弁の44材料のうち、pH4.5〜4.0で6種、pH3.5〜3.0で17種、pH2.5〜2.0で29種、pH1.5〜1.0で44種の花弁に変脱色が発現した。ヒビスカス(桃)、アサガオ(桃)、ハナタバコ(赤)、ニチニチソウ(紫)などは障害が発現しやすく、シンビジウム(黄)、チューリップ(桃)、カ-ネーション(白)など障害がは発現しにくい傾向がみられた。一般に酸性雨による障害は赤、紫、青、橙色の花弁で障害を受けやすく、黄、白色の花弁では障害を受けにくく、また花弁は葉よりも障害が発現しやすい傾向がみられた。 3.倉敷の雨水の観測と解析を行った結果、1991-1995(5年間)の降水のpHはpH3.3〜7.0の範囲にあり、平均値は4.38であった。また、降水の95%がpH5.6以下のいわゆる「酸性雨」であった。
|