研究概要 |
「概要」我々は粘質乳酸ヴィリ-のスターターの一つであるLact.cremoris KVS20が生産するリン酸化多糖(S-2)のリンパ球(Ly)・マクロファージ(MΦ)に対する種々の生物学的活性を明らかにしてきた.本研究では、S-2が示すBリンパ球幼若化活性の誘導機序ならびにサイトカイン誘起能について,フローサイトメトリー(FCM)およびReverse Transcription-Polymerease Chain Reaction(RT-PCR)法を用いて細胞および分子レベルで解析し,以下の見知を得た. 「結果」1.Bリンパ球幼若化活性誘導の機序:幼若化活性は幼若化物質が直接リンパ球に結合・刺激し,また活性の発現にはMΦが関与することが知られたいる.S-2の幼若化活性は,脾細胞から付着性MΦを除去した後でも認められ,S-2は直接Bリンパ球と結合すること,活性の発現にはMΦの関与は少ないことが判明した.さらにFCMの結果,S-2刺激によりS期細胞はB細胞幼若化物質として知られるリポ多糖(LPS)刺激により早く出現することが判明した.しかしながら,S期細胞はLPSほど数多く誘導されなかった.このことから,S-2によるBリンパ球幼若化の誘導は,反応開始後速やかに発現され,その活性はLPSと異なることが明らかとなった. 2.サイトカイン産生の誘導:S-2のサイトカイン誘起能を生物学的活性測定法およびRT-PCR法を用い詳細に検討した.S-2(50μg/ml)で刺激した脾臓MΦ(SP-MΦ)培養上清中で約80IU/mlのIFNが誘起された.一方,腹腔MΦ(TG-MΦ),線維芽細胞およびLyからのIFN誘起はわずかであった.RT-PCR法により,S-2刺激SP-MΦにおいてIFNγ-mRNAの発現が認められた.さらに,S-2刺激によりTG-MΦおよびSP-MΦにおいてIL-1α-mRNAの発現が認められた.さらに,これらの結果,S-2はmΦの培養系でIFNγ,IL-1αのmRNAの転写を促進し,サイトカイン産生を増強することが証明された. 以上の結果より,Lact.cremoris KVS20が生産するリン酸化多糖の食品としての三次機能が免疫担当細胞に生物活性としてより詳細に把握された.このことは,Lact cremoris KVS20が生産するリン酸化多糖の食品としての三次機能が免疫担当細胞に対する生物活性としてより詳細に把握された.このことは,Lact.cremoris KVS20を含む発酵乳製品を機能性食品として位置づける基礎を築くものと考えられる.
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