牛脂や豚骨脂は安価な食用あるいは工業用原料として利用されているが、廃棄処分されているものも少なくない。本研究では、これらの動物性油脂性状の解析を行い、ついでこれらの油脂を脂肪資化性微生物を用いて有用油脂へ改変することを試みた。 牛脂は非常に飽和度が高いトリグリセリドから成っていることが明らかにされ、それらの高融点成分が多いことが口溶けが悪く舌触りが悪い原因となっていることが示された。また、主要ステロールがコレステロールであることが解明され、これも牛脂を食品としての利用する場合に制限因子となることが明らかとなった。豚骨脂は、パルミチン酸をはじめとする飽和脂肪酸を多く含み、さらにコレステロール含量は、牛脂の2〜4倍であった。 土壌からの脂質資化性微生物の探索を試み、脂質資化性菌が78株分離された。このなかから脂質資化性が良好な4株(Candida sp.3株、Geotrichum sp.1株)を選び、性状解析を行った。牛脂または豚骨脂を炭素源とする培地中でこれらの菌を培養したところ、菌体内に貯蔵する油脂の大部分はトリグリセリドであった。その脂肪酸組成は菌株によって異なり、オレイン酸含量が65%を越えるものおよびリノール酸が20%を越えるものが見られた。また、菌体内には動物性油脂由来のコレステロールとともに、菌体内で生合成したと考えられるエルゴステロールも検出された。トリグリセリド組成は融点の低い不飽和トリグリセリトのみとなっており、菌体内でのエステル交換や脂肪酸の不飽和化が行われて、トリグルセリドが改変されることか明らかとなった。 今後は、本研究によって分離された優れた脂質資化性を有する酵母の育種改良を進めるとともに、有用油脂含有微生物菌体の飼料への添加試験を実施し、家畜や家禽への効果を明らかにして行く予定である。
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