研究概要 |
本研究は,第一に牧草飼料中の摂取タンパク質分画方法の確立,並びに暖地型牧草の材料草(乾草)とそのサイレ-ジ中のタンパク質画分をそれぞれ比較する.次に,開封後2次発酵による発熱を考慮した加熱処理が,暖地型マメ科及びイネ科牧草サイレ-ジの反芻胃内における摂取タンパク質の利用性に及ぼす影響を検討することを目的とする. 1.反芻家畜による牧草の摂取タンパク質を易溶解性,分解性,非分解性及び不消化性の4分画する方法を明らかにし,数種の暖地型牧草について,核分画割合を示した. 2.ルーメンバッグによるIn situ法-ペプシン処理後の窒素(N)及びペプシン-セルラーゼ法後のNを測定した結果,これまでの測定方法であるADF処理後のNとの間に各々高い(P<0.0001)正の相関関係を示し,新規導入したこれらの方法によっても,不消化窒素成分(タンパク質)の評価が効率的にできることを示した. 3.暖地型マメ科牧草5草種,暖地型イネ科牧草2草種を供試草種とし,調製したサイレ-ジの分画の特徴を乾草の場合と比較したところ,サイレ-ジにおける易溶解性と分解性タンパク質の割合の増加は,発酵による非タンパク態窒素の増加に起因するものと考えられた. 4.発熱を伴うサイレ-ジにおいては,加熱温度が高まるに伴い,第1胃内での乾物消失率の低下と共に,窒素成分溶出率も低下する傾向を示した.また,不消化性タンパク質の割合は加熱処理によって顕著に高まることを示した.下部消化管で吸収され,体内で利用される真のルーメンバイパスタンパク質の割合は,加熱処理によって,一部のマメ科牧草種では増加する傾向がみられたが,他の草種では低下を示した. 5.これまでの試験結果から,牧草中の摂取タンパク質の分画の方法と暖地型牧草の摂取タンパク質成分の反芻家畜による利用性を制御する際の基礎的資料としての知見が得られたものと考えられる.
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