研究概要 |
受精卵移植の実施機関は体内受精卵移植に限ると平成4年度現在全国で297機関に及び、生産子牛頭数は試験研究によるものを除いて年間ほぼ9,000頭に達している。事例的には供卵牛50頭、受卵牛150頭を飼育する商業的な肥育素牛生産経営も現れており、既に実用技術としての端緒的な位置を占めて来ている。 しかし、実施機関の平均受胎率は46.9%でなお低位にあり、それがコマーシャル・ストックとしての子牛生産への普及の大きな障害になっている。実施機関別の受胎率を個別に見ると最高は70%を越えており、これからの受胎率向上の可能性を示している。 今回の研究の結果は、受胎率70%、双子分娩率40%がコマーシャル・ストック生産のための必要水準であることを示しており、肥育素牛生産の一般的技術として普及するにはさらに受胎成績の向上が不可欠である。乳用牛による肥育素牛としての異品種生産も、なお旧来技術による交雑種生産が一般的なのは受精卵移植による受胎率の低さに起因する競争力の弱さにある。 受精卵移植技術は現在なお実用技術としての普及の途上にあり、コスト把握が試算の域を出ないため当該技術の普及に伴う子牛価格及び肉牛価格への影響を予測するまでには至らなかった。
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