研究概要 |
最近,ニワトリの初期胚操作法として,卵殻外培養法と窓開け受精卵法が開発された.ところが,何れの初期胚操作法を用いた場合もふ化率はかなり低い.家禽の標的遺伝子組換えの形質転換動物を作成する目的で初期胚操作法を用いる場合には,高いふ化率の得られることが極めて重要な要因となる.そこで,まず,窓開け受精卵法の改良を試みた.すなわち,ステ-イジ1の窓開け受精卵の窓を卵殻膜付き卵殻で蓋をする区,ラップで蓋をする区,ラップと卵殻膜付き卵殻で蓋をする区を設け,各区の孵卵壊死6および13日目の生存率,ふ化率,Hamburger&Hamiltonの分類による死亡ステージおよびAsmondsonの分類による死亡体位を調べた.ラップ区およびラップ卵殻膜付き卵殻区の生存率,ふ化率が著しく高い値を示した.このことから,窓開け受精卵法で初期胚操作を行う際にラップを窓の蓋として使用することが極めて有効な事が明らかにされた.次に,このラップを用いる窓開け受精卵法で生殖系キメラを作成する際のピエゾマイクロマニュピュレーターとセルインジェクターの有効性を検討した.家兎血清を含むTCM-199培地に5X10_5cells/mlの黄班プリマスロック単離胚盤葉細胞を浮遊させ,この単離胚盤は細胞浮遊液を,芯入りガラス管で作製した先端径50μmマイクロピペットを接続させたピエゾマイクロマニュピュレーターとセルインジェクターを用いて色々の設定条件下で注入し,孵卵中の生存率,死亡胚の発育ステージおよび体位,孵化率,羽毛キメラ発生率,孵化羽毛キメラ発生率,キメラの育成率及び生殖系キメラ発生率を測定した.その結果,窓開け受精卵法で生殖系キメラを作成する際にピエゾマイクロマニュピュレータとセルインジェクターを用いる事は非常に有効な事が明確にされた。
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