研究概要 |
1.鶏の視床下部のメラトニン受容体について 雌鶏の視床下部の視索前野領域及び正中隆起部領域の各組織の細胞膜画分について、トリチウム標識メラトニンを用いて結合アッセイを行った結果,メラトニンに対する結合特異性,結合飽和性,高い親和性と小さい結合容量を示す結合物質,すなわち受容体とみなし得る物質が存在することが明らかとなった。また、両組織における受容体の結合親和性と最大結合容量は、産卵鶏では排卵同期中に,休産鶏では1日のうちで,顕著な変動を示すことが明らかとなった。しかし,この変動は産卵鶏でも休産鶏でもほぼ同じ様相であり,産卵機能と特に関係するものとはみなし難いものであった。 2.下垂体前葉のメラトニン受容体について 雌鶏の下垂体前葉組織について上記と同様な検討を行ったところ,細胞膜画分におけるメラトニン受容体の存在が立証された。この受容体のメラトニンに対する特異的結合量は,産卵鶏では休産鶏よりも多く,排卵同期中に顕著な変動を示すのに対し,休産鶏では1日のうちで顕著な変動を示さないことが明らかとなった。従って,メラトニン受容体の結合能は下垂体前葉では産卵機能と関連するものであろうと考えられる。 3.卵巣のメラトニン受容体について 鶏の卵巣の卵胞顆粒膜細胞と莢膜細胞のそれぞれの細胞膜画分について,上記と同様な方法によってメラトニン受容体の検索を行った。その結果,顆粒膜細胞については受容体の存在が立証されたが,莢膜細胞については証明することが不可能であった。 本研究によって,松果体ホルモンであるメラトニンは視床下部,下垂体前葉,卵巣のそれぞれに対して,その受容体を介して直接的に作用するものであると考えられることとなった。
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