伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)は、IBDウイルス(IBDV)に起因する鶏の疾病で、従来免疫機能障害にもとずく起病性の増強作用が重要視されてきた。1990年頃から致死性の強いIBDが出現し、野外では大問題となった。本研究では最近出現した高病原性IBDV(993株)の性状を明らかにするために、シクロホスファミド(CY)処理によりファブリキウス嚢を除去した雛を作出し、鶏に対する病原性について検討した。 CY処理未接種対照群のファブリキウス(F)嚢では再生濾胞が散見され、免疫抑制は不完全であった。従来株(J1株)および993株のCY処理接種群では臨床的に異常はみられず、観察期間中に斃死する雛はなく、肉眼病変も軽微であった。一方、従来株接種群では臨床症状は軽微であったが、993株接種対照群では重度の臨床症状が発現しすべての雛が5日以内に死亡した。組織学的にはCY処理接種群では、F嚢の再生濾胞で病変が認められたが、胸腺および骨髄では病変程度は軽微であった。F嚢のウイルス感染価は、CY処理接種群では10^<2.5>-10^<3.5>/0.1mlであるのに対し、993株接種対照群では10^<6.5>/0.1mlとかなり高い価を示した。また末梢血液中には993株接種対照群のみでウイルスが検出された。以上示したように、CY処理することにより臨床症状の発現は抑制され、臨床症状の発現には感染初期におけるリンパ・造血組織における急激かつ広範な壊死性病変が重要であることが明らかとなった。
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