研究課題/領域番号 |
06660374
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基礎獣医学・基礎畜産学
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
岡崎 克則 東京農工大学, 農学部, 助手 (90160663)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | ウシヘルペスウイルス1型 / 吸着 / 侵入 / バキュロウイルス / gIII / gIV / エンドサイトーシス |
研究概要 |
一般的に、エンベロープウイルスでは宿主細胞への吸着・侵入反応には糖蛋白が関与するとされている。標準的なヘルペスウイルスであるヒト単純ヘルペスウイルスでは少なくとも11種の糖蛋白が同定されており、これらが複雑なカスケードを形成して細胞内に侵入し、感染が成立するものと考えられている。一方、動物のヘルペスウイルスでは未同定の糖蛋白も少なくなく、2〜3の糖蛋白に関して個々の機能が推定されているのみで、それらによるカスケード反応は全く不明であった。そこで本研究では、ウシヘルペスウイルス1型(BHV1)の主要糖蛋白であるgIIIおよびgIV発現組み換え体バキュロウイルス(gIII-およびgIV-BV)感染昆虫細胞と自然宿主であるウシ由来の細胞との相互作用ならびにBHV1精製粒子による溶血活性を調べることによりBHV1吸着・侵入反応の解析を行なった。 gIII-およびgIV-BV重感染細胞では両糖蛋白ともに原形質膜上に発現し、これらの重感染昆虫細胞あるいはgIII-BV感染昆虫細胞はウシ由来細胞に吸着することが分かった。これらをpH5.5に暴露したところ、gIII-およびgIV-BV重感染昆虫細胞は37C、2〜5時間でウシ由来細胞と高頻度に融合し、一部は巨細胞を形成した。一方、gIII-BV単独感染昆虫細胞ではほとんど融合反応は認められなかった。gIV-BV単独感染昆虫細胞では何れの条件下でも吸着・融合反応は認められなかった。組み換え体ウイルス感染昆虫細胞のウシ由来細胞への吸着・融合は、gIIIを認識するウイルス吸着阻止単クローン抗体ならびにヘバリンによって阻害された。また、gIVを認識する中和単クローン抗体では吸着反応の阻害は認められなかったが、酸性条件下での膜融合は著しく抑制された。 エンベロープウイルスは原形質膜表面(中性域)あるいはエンドソーム内(弱酸性)で膜融合を起こすことにより細胞質内に侵入すると考えられている。そこで、BHV1精製粒子を用いて膜融合活性の指標である溶血活性を調べたところ、本ウイルスではpH5.6〜5.3で溶血反応が認められた。これまでのところ単クローン抗体による阻害は認められていないが、本成績はBHV1がエンドソーム内で侵入する可能性を示している。 以上の成績から、BHV1はgIIIを介して宿主細胞に吸着した後にエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、エンドソーム内の弱酸性環境下でgIVが膜融合を起こすことにより細胞質内に侵入する可能性が示された。
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