研究概要 |
1.研究目的:哺乳動物胚の核移植に用いるドナー核を多数確保しようとして,発生の進んだ胚から胎児に発生する能力をもつ割球のみ選別する技術を確立しようとした。2.研究計画:平成6年度は割球表面微絨毛のPolarity(極性化)と発生能に着目し,選別法としてFITC結合Concanavarin A (以下,Con A )法とアルカリフォスファターゼ染色(以下,ALP)法について検討した。供試胚は体外受精ウシ胚と体内受精ウサギ胚を用いた。割球内Polarityについて共焦点レーザー顕微鏡で観察した。平成7年度は,6年度の成果に基づきCon A法に例数を加えて再確認し,さらにハムスター胚とも比較した。また,ハムスター胚とウサギ胚の走査型電子顕微鏡(以下,SEM)観察を行なった。ウシ胚割球から選別した割球による核移植も試みた。3.研究成果:Con A法とALP法の比較ではCon A法がPolarity観察に適していた。Polarityは,ウシ胚では10細胞期から,ウサギ胚では32細胞期から発現することが確認された。ハムスター胚は染色パターンの差は見られなかったが,SEM観察から8細胞期からであった。割球内構造のPolarityは蛍光反応部位とほほ一致しており、また凍結割断胚のSEM像でも核が胚周辺割球では外側に,中央部割球では中心に位置していた。ウシ胚(桑実期)割球を選別して核移植したところ発生胚は得られなかった。 これらの結果から,割球の選別法としてCon A法の有効性が示された。核移植には,蛍光顕微鏡下での紫外線の影響を少なくする方法を開発することが胚発生に必要と思われた。Con A法により,Polarityの発現時期が体外受精胚と体内受精胚で異なることが確認され,また割球内においてもPolarityの発現していることが観察された。従って割球の選別は可能であると思われた。
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